令和6年度 下期 電力 問17
無負荷の送電線で受電端電圧が送電端より高くなるフェランチ現象(π形等価回路で計算)

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和6年度 下期 第三種電気主任技術者試験 電力科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
受電端が無負荷でも、受電端側のコンデンサ(B/2)には電流が流れ、その電流がリアクタンス X を通るときに電圧が上がる。これがフェランチ現象。
準備:1相分で考えるので、送電端の相電圧は E_s = 66.0 kV / √3 = 38 105 V。B/2 = 0.400 mS。
(a) 受電端の線間電圧
受電端の相電圧を E_r とすると、受電端のコンデンサに流れる電流は I = j(B/2)E_r(E_r より90°進み)。この電流がリアクタンス jX を通ると、電圧は E_s = E_r + jX × j(B/2)E_r = E_r × (1 − XB/2) となる。j × j = −1 なので、リアクタンスの電圧は E_r と逆向きになり、送電端より受電端のほうが高くなる。
XB/2 = 200 × 0.400×10⁻³ = 0.08 E_r = E_s / (1 − 0.08) = E_s / 0.92 線間電圧も同じ比なので V_r = 66.0 / 0.92 = 71.7 kV
(a)の正解は(2)。
(b) 送電端電流
送電端の電流は、受電端のコンデンサの電流と、送電端のコンデンサの電流の和。どちらも電圧より90°進んでいて、E_r と E_s は同じ向き(同相)なので、大きさをそのまま足せる。
受電端側:(B/2)E_r = 0.400×10⁻³ × 38 105/0.92 = 0.400×10⁻³ × 41 419 = 16.6 A 送電端側:(B/2)E_s = 0.400×10⁻³ × 38 105 = 15.2 A 合計 I_s = 16.6 + 15.2 = 31.8 A
(b)の正解は(4)。
落とし穴は、(b)で片方のコンデンサだけを数えること。受電端側だけなら16.6 A で(2)、送電端側だけなら15.2 A で(1)になる。また線間電圧のまま電流を計算すると √3 倍の55.1 A になり(5)を選んでしまう。電流は必ず相電圧で計算する。
選択肢ごとの理由
- (1)(a)の 66.0 kV は送電端と同じ値で、フェランチ現象による上昇を考えていない。(b)の 15.2 A は送電端側のコンデンサの電流だけ。
- (2)(a)は正しい(66.0/0.92 ≒ 71.7 kV)。(b)の 16.6 A は受電端側のコンデンサの電流だけで、送電端側の 15.2 A を足していない。
- (3)(a)の 78.6 kV は、B/2 ではなく B を使って 66.0/(1 − XB) とした場合。(b)の 28.7 A は、受電端の線間電圧 71.7 kV に B/2 を掛けた値に近く、相電圧を使っていない。
- (4)正しい。(a) V_r = 66.0/(1 − XB/2) = 66.0/0.92 ≒ 71.7 kV。(b) 16.6 + 15.2 ≒ 31.8 A。
- (5)(a)の 114 kV は 66.0 × √3 で、線間電圧と相電圧を取り違えている。(b)の 55.1 A は線間電圧で電流を計算した場合で、正しい値の√3倍。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
フェランチ現象は、データセンターの建設が進む地域で実際に問題になっている。大規模DCは特別高圧の地中ケーブルで受電することが多く、地中ケーブルは架空線よりはるかに静電容量が大きい。そして開業直後のDCは、受電設備の容量に対してサーバがまだほとんど入っていない、つまり無負荷に近い状態が数か月〜数年続く。この問題の条件がそのまま現実に現れる。 このとき受電点の電圧が上がりすぎると、変圧器の励磁電流が増えたり、機器に定格を超える電圧がかかったりする。対策は、問題6に出てきた分路リアクトルを入れて、ケーブルの進み電流を打ち消すこと。電力会社との協議で、DC側に分路リアクトルの設置を求められることもある。同時に、構内の進相コンデンサは軽負荷時には切り離しておく。 夜間の軽負荷時に電圧が上がるのも同じ理屈で、電力会社の系統全体ではDCのような大口需要家の負荷の変化が電圧調整の前提になる。DCの電気主任技術者は、自分の施設の負荷が系統の電圧にどう影響するかを、電力会社と話せるだけの理解を求められている。
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