令和6年度 下期 機械 問13
PID制御の積分動作・微分動作・比例動作の役割

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和6年度 下期 第三種電気主任技術者試験 機械科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
PID制御の3つの動作の役割を区別する問題。
**(ア) 定常** 積分動作(I)は、偏差を時間で積み上げて操作量を変える。偏差が小さくても残っている限り操作量が増え続けるので、最終的に**定常**偏差(オフセット)をゼロにできる。つまり定常特性の改善に効く。
**(イ) 過渡** 微分動作(D)は、偏差の変化の速さに応じて操作量を出す。偏差が大きくなり始めた段階で先回りして修正するので、行き過ぎ(オーバーシュート)や振動を抑え、**過渡**特性(応答の速さ・安定性)の改善に効く。
**(ウ) 比例** **比例**動作(P)は偏差に比例した操作量を出す基本の動作で、ゲインを上げれば応答が速くなり(過渡特性)、定常偏差も小さくなる(定常特性)。ただし比例動作だけでは定常偏差は完全にはゼロにならない。両方を「ある程度」改善する、という言い方はこのことを指している。
以上より正解は(2)。
「積分は過去を足し込んで残差を消す、微分は未来を読んで暴れを抑える、比例は今に反応する」と時間の向きで覚えると、取り違えにくい。
選択肢ごとの理由
- (1)(ウ)の加算が誤り。PIDの3動作は比例・積分・微分で、加算動作という制御動作はない。
- (2)正しい。積分は定常特性、微分は過渡特性、比例は両方をある程度改善する。
- (3)(ア)(イ)が逆。積分動作が改善するのは定常偏差で、微分動作は過渡応答の改善に効く。
- (4)(ア)(イ)が逆で、(ウ)の加算も誤り。
- (5)(ウ)の減算が誤り。両方の特性をある程度改善できるのは比例動作。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
PID制御は、データセンターの空調の温度制御でいちばん身近に動いている制御。 空調機は「吸い込み温度(あるいはサーバの吸気温度)を設定値に保つ」ために、冷水弁の開度やファンの回転数をPID制御で動かしている。比例だけだと設定値からわずかにずれたまま落ち着き(定常偏差)、積分を強くしすぎると行き過ぎて冷えすぎ・温まりすぎを繰り返す(ハンチング)。微分は急な負荷変化への応答を速めるが、センサのノイズを拾いやすいので、空調では使わないか弱くすることが多い。 DCでは複数台の空調機が同じ部屋を冷やすので、各機のPIDの設定がちぐはぐだと、1台が冷やし、隣の1台が加湿・再熱で温める、という「空調機どうしのけんか」が起きて電力を無駄にする。PIDの各動作が何を直しているのかを分かっていると、トレンドグラフを見て、どのゲインを触るべきか判断できる。
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